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仙台高等裁判所 昭和47年(う)31号 判決

本籍

盛岡市大通三丁目一五番地の一

住居

盛岡市大通三丁目一〇番一〇号

会社役員

岡部岩雄

明治三七年三月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和四六年一二月一日盛岡地方裁判所が言い渡した判決に対し、原審弁護人から控訴の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原判決を破棄する。

本件を盛岡地方裁判所に差し戻す。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人榊原孝名義の控訴趣意書記載(ただし第一の一(二)の記載中、昭和三二年一二月末までに引渡された数量二二、二七八石六斗とあるを二一、〇二八石六斗と、残余約八、七〇〇石余りその価格一、七四〇万円とあるを残余約九、九五〇石その価格一、九九〇万円と訂正する)のとおりであるから、これをここに引用する。

控訴趣意第一点について。

所論の要旨は次のとおりである。

原判決は、昭和三二年度における被告人の課税所得金額は総額四、五三八万五、〇〇〇円で、これに対する所得税額は二、〇四五万一、四一〇円である旨認定しているが、右所得額の認定には重大な事実の誤認がある。

一、(一) 原審認定の山林所得七、二八二万七、一一九円のうち、六、〇〇五万二、〇〇〇円は被告人がその所有の盛岡市繋第二四地割四七番地の二ないし八に所在する山林(公簿面積五六町七反四畝二二歩。通称繋山林)の杉立木を秋田木材株式会社に譲渡した所得とされているものであるが、昭和三二年一月三一日付売買契約書にもとづき秋田木材から被告人に支払われた代金三、〇〇〇万円(現金一、五〇〇万円と約束手形一、五〇〇万円)に対しては、同日被告人から秋田木材に対し額面合計一、五〇〇万円の約束手形(五通)が振出され、また同年四月五日付売買契約にもとづき支払われた代金一、〇〇〇万円(現金)に対しては同日額面合計二、〇〇〇万円の約束手形(八通)が被告人から秋田木材に対し振出されているところ、右手形振出が被告人の融通手形たると右売買代金の見返りないし保証たるとを問わず、被告人としては右各手形の所持人に対しこれを支払うべき義務を免れ得ないものであるから、秋田木材が被告人に支払つた売買代金中右手形金額合計三、五〇〇万円に対応する金員は、仮受金もしくは借入金員として処理されるべきもので、これを同年度における被告人の山林所得とすべきではない。したがつて前記六、〇〇五万二、〇〇〇円より三、五〇〇万円を差引いた二、五〇二万二、〇〇〇円が同年度における繋山林秋田木材関係の所得となるべきである。

(二) 仮りに右主張が採用されないとしても、秋田木材関係の前記六、〇〇五万二、〇〇〇円のうち一、七九九万四、八〇〇円(主張の一、九九〇万円は計算の誤りと認められる)は昭和三二年度の収入とされるべきではない。

原判決は、被告人と秋田木材との繋山に関する売買契約を杉立木の売買で契約締結と同時に立木の所有権が被告人から秋田木材に移転し、これと同時に被告人は売買代金あるいは売買代金債権を取得したものと解し、同年度内に被告人と秋田木材との間に締結された前後四回にわたる売買契約の代金総額六、〇〇五万二、〇〇〇円を被告人の収入と認定したが、被告人と秋田木材との売買契約は昭和三二年一月三一日から翌三三年四月五日にかけ合計六回に分けて締結されているものの、前後を通ずる継続した一個の取引で、その内容は、立木を伐採し売主買主双方が石数を立合検知のうえこれを引渡したときにその伐木の所有権が移転する趣旨の、いわゆる出材契約であり、昭和三二年中に被告人から秋田木材に引渡された杉伐木は二万一、〇二八石六斗でこの代金は石単価二、〇〇〇円として四、二〇五万七、二〇〇円である。そして税法上山林所得は対象物件の所有権が移転するときをもつて権利確定の時期とされているのである(基本通達一-二〇一号)から、被告人の同年度における秋田木材関係の山林収入は右の四、二〇五万七、二〇〇円である。

二、また山林の取得費は山林総収入から当然控除されるべきところ、原判決は、被告人において昭和二二年一二月に本件繋山林を杉本合名株式会社から三〇〇万円で買受けた旨認定しているが、被告人は昭和二一年一〇月、当時御所村森林組合長であった高橋金五郎より、同人が杉本合名から買受けることになつた本件繋山林を六〇〇万円で買受ける約束をして同日三〇〇万円を支払い、その後昭和二二年一二月ころ右高橋が杉本合名から同山林を三〇〇万円で買受けた際、被告人が右高橋を通じて杉本合名に三〇〇万円を支払つて、結局同山林の所有権が被告人の所有となつたのである。したがつて、右取得費六〇〇万円につきこれを再評価のうえ、昭和三二年度の同山林の総収入に按分した額が控除すべき山林取得費となるべきものである。

三、また被告人は昭和三二年一二月一八日、当時被告人が株式総数の約九〇パーセントを保有し、その経営に当つていた石鳥谷化学工業株式会社に対する自己の債権のうち、貸付金二、一二八万円と立替金九三六万円について、同会社の取締役会でこれを被告人の同会社に対する欠損金(貸倒れ金)として処理することに同意し、同日をもつて右各債権は消減した。したがつて右債権額は同年度における被告人の事業上の損金または必要経費として同年度の総収入金額から当然控除されるべきものである。しかるに原判決は右貸倒れ金を総収入から控除しなかつた。

以上のとおり原判決には課税対象となるべき所得額の認定に重大な事実の誤認があるので破棄されるべきである、というにある。

ところで、原判決が昭和三二年度における被告人の課税所得金額を認定するにあたつて、繋山林に関する被告人と秋田木材との売買契約の内容ならびにその収入金額および同山林の取得額、同年度の控除すべき必要経費につき弁護人所論のとおりの判断に立つものか否かは、各勘定科目の内容につき判示のない原判決の判文上必ずしも明確でないが、原判決認定の課税所得金額の基礎となる同判決記載の修正損益計算書および税額計算書を原審記録に現われた検察官および弁護人の各主張、特にその主要争点とこれに対する立証の全過程に照らし考察すると、原判決は弁護人所論の各争点につき、その所論のとおりの事実認定を経て判示の所得金額を認定するに至つたものと認められる。

よつてまず所論一の(一)、(二)について判断するに、原審が適法に取調べた各証拠に当審における事実取調べの結果を合せ検討すると、被告人は盛岡市に居住し、石鳥谷化学工業株式会社および東北急行運送株式会社の代表取締役としてその経営に当るとともに、個人企業として岡部工業所の商号のもとに炭坑や鉱山を経営し、また盛岡市繋第二四地割四七番地の二ないし八に所在する山林(公簿面積五六町七反四畝二二歩)を所有して杉立木を造林し、西根村村有林の立木を買受けて木炭を製造する等の山林経営を行つていたが、石鳥谷化学および東北急行運送の経営状態がおもわしくなく、被告人の個人資産を継続的に両会社に投入してようやくその運営にあたつて来たところ、昭和三二年一月右資金捻出のため、恰度植林から約四五年を経て伐採期に達していた右繋山林の杉立木を処分することとなり、盛岡市に出張所を有する秋田木材株式会社とその交渉を持つに至つた。ところで山林毛上の処分方法には、一定区域の立木をそのままの状態で売買するいわゆる立木売買契約と、立木を伐採のうえ双方検知して引渡がなされたときにその伐木の所有権が移転するいわゆる出材契約があり、繋山林の売買については当初被告人も秋田木材も立木売買を予定し、杉立木一石を二、〇〇〇円とする単価の折合いはついたが、売買の対象区域とされるべき各林班(繋山林はそれまで地形などにより地番とは関係なく二二の林班に区分して管理されていた)の所在見込石数について双方の見解が大きくくい違い立木売買契約の締結は不可能となつた。しかし被告人としては石鳥谷化学や東北急行運送の運営に必要なまとまつた資金を早急に人手するために繋山林の売却を決意したものであつて、通常の出材契約により、伐採して引渡した伐木の代価が順次支払われるのではその目的に副わないし、秋田木材としても木材需要の多いときに他に繋山林のごとき良質大量の杉材を獲得することはなかなか困難で、まとめてこれを取得したい意思があり、双方の意向を調整し結局、繋山林の杉立木をおおむね全部売買することを前提としたうえ、伐採作業を行う秋田木材の作業能力および支払能力と被告人の必要金額を勘案して、時期をずらし数回に分けて契約を締結することとし、その各内容は契約ごとに予め伐採して引渡すべき石数とその単価およびその予定石数に達するまで伐採すべき区域としての林班を定め、その契約石数は伐採後双方立会い検知のうえ順次引渡されるが、引渡予定石数に単価を乗じて得られる契約代金は契約締結と同時に現金および約束手形で支払うこと、ただし初期の契約においてはいまだ秋田木材が出材の引渡を受けないうちに代金の前払をすることになる関係から、双方の利益の均衡を計るため、被告人において契約締結の際秋田木材に対し約束手形を振出し、これを秋田木材が割引料被告人の負担で銀行割引をし、その金員を当該契約の代金として交付する、ということに意思が合致し、次のとおりの契約が順次締結された。

〈省略〉

〈省略〉

そしてなお、被告人から秋田木材に対する見返り手形としては、(一)の契約のとき、支払期日が昭和三二年四月二〇日から同年五月五日までの額面二一〇万円、二五五万円、四七五万円、三一五万円、二四五万円(合計一、五〇〇万円)の約束手形が振出され、また(二)の契約のとき、支払期日が昭和三二年六月二五日から同年一〇月四日までの額面二五〇万二、六五〇円、二四九万六、五〇〇円、二六五万八、六〇〇円、二三四万二、二五〇円、二四〇万八〇〇円、二七八万五〇〇円、二五八万四〇〇円、二二三万八、三〇〇円(合計二、〇〇〇万円)の約束手形が振出され、(一)の分についてはそのうちの五〇〇万円)の約束手形が振出され、(一)の分についてはそのうちの五〇〇万円、(二)の分についてはそのうちの一、〇〇〇万円が被告人の割引料負担により秋田木材が銀行で割引いたうえ、各契約代金の一部として支払われた。そして繋山林の立木伐採は(一)の契約締結後直ちに秋田木材の下請人により被告人側の監視のもとに始められ、その伐木が或る程度の数量になるごとに、被告人と秋田木材の各責任者が立会検知してその引渡がなされ、このような伐採、検知、引渡の作業は昭和三三年秋頃まで継続して行なわれたことが認められる。

ところで原審証人橋本邦雄の証言および同人の盛岡地方裁判所昭和三八年(行)第五号事件における証人尋問調書によると、仙台国税局の国税調査官として被告人の本件脱税容疑の調査に当つた同人は、被告人と秋田木材との間に締結された本件各契約書(証第三七ないし四二号証)の記載および秋田木材能代製材所長片谷国雄、同盛岡出張所長木村政義の供述から、本件繋山林の売買は立木売買であると判断した旨供述している。そして右各契約書はいずれも「杉立木売買契約書」と表示され、その契約条項には林班の特定とその立木代金および支払方法に関する記載があつて、一見すると立木売買の契約書と解されないではなく、また右各契約の締結に関与した買主秋田木材株式会社盛岡出張所長片谷国雄(同社能代製材所長を兼務)および同出張所主任木村政義(ただし前記契約(六)の当時は同出張所長となる)は検察官の取調べに対し右各契約書を説明して立木売買である旨供述し、木村政義の原審第一回証言もこれに副うものであるが、およそ立木売買であれば、特定区域内の特定された樹種は特段の定めのない限り契約締結と同時にすべて買主に所有権が移転し、伐採後検知引渡の手続を必要としないのは当然のところ、本件契約においては、前記(一)の契約書を除き契約書自体に契約石数は出材の石数をいい出材を双方立会検知のうえ引渡す趣旨の記載があつて、その現実の手続もすでに認定のとおり、すべて伐採材木を双方検知のうえ引渡がなされたのであり、また前示(一)ないし(六)の契約書上指定された各林班には、先きの契約に指定した林班を後の契約で再度あるいは三度も指定しているところがあり、なお当審取調べの乙第四四号証の一ないし六、同四五号証の一ないし三(いずれも当庁昭和四四年(行コ)第九号記録から顕出)および原審における被告人質問の結果によると、被告人は昭和三一年一二月二日付をもつて日本電柱工業株式会社との間に、翌三二年二月以降毎月一、五〇〇本の電柱を売却する旨の契約を締結し、そのころから同年五月ころまで、秋田木材に指定をした林班を含む繋山林の全域から電柱材となる良質な杉立木約一、四四〇本を伐採搬出していることが認められ、これらの事実が、林班の指定につき何らの除外条項もない本件各契約において、契約締結と同時に立木の所有権が移転する趣旨の立木売買契約と相容れないことは明らかである。

また、前示各契約に際し、その契約代金全額が現金および約束手形で支払われた事実は、本件を出材契約でなく立木売買契約と解すべき一つの証左の如くであるが、すでに認定のとおり、前記(一)の契約については秋田木材から現金一、五〇〇万円と約束手形が支払われる一方売主である被告人から秋田木材に一、五〇〇万円の約束手形が振出され、そのうち五〇〇万円は割引料被告人負担で割引かれて秋田木材から被告人に交付された代金の一部に当てられ、その余の約束手形は秋田木材が割引いてこれを使用し、(二)の契約の際には秋田木材から一、〇〇〇万円の現金が交付されたが、(一)の契約による伐採引渡の作業が遅れ予定どおりの出材がないことから、その点を勘案し、(二)の契約代金額が一、〇〇〇万円なのに拘らず二、〇〇〇万円の約束手形が被告人より秋田木材に振出され、そのうちの一、〇〇〇万円が前同様に割引かれて秋田木材から支払われた金員に当てられており、なお被告人および秋田木材の振出した各手形は伐採引渡の予測される石数と日時を勘案してその金額と支払期日が定められたことが前掲の各契約書から窺えるのであつて、右の事実からすれば双方の取引関係の実質は立木の売買とその代価の支払ではなく、出材の引渡しとその代価の支払であり、これを超えて支払われた秋田木材の支払金員は、梅田哲太郎の検察官に対する供述調書によつて認められる秋田木材の帳簿処理からも窺えるように、後日引渡されるべき材木代金の前途金に過ぎないものと解せられる。そして以上の事実からすると本件山林の売買は伐木が売主から買主に引渡されたときその所有権が移転するいわゆる出材契約と解するのを相当とする。

ところで所論一の(一)は被告人の秋田木材に対する前示三、五〇〇万円の約束手形振出をもつて、本件繋山林売買に関する被告人の債務負担行為であるから、同金額はその山林所得から控除されるべき旨主張するものであるが、すでに認定のとおり、被告人振出の各約束手形は、被告人が将来引渡すべき出材につき予め交付された秋田木材の現金あるいは約束手形と対価関係にあり、被告人において前途金を受領する際、その契約に定める伐木を引渡さない限り、これを返還すべき債務を負担するが、秋田木材としても被告人に対し、その受領手形を割引銀行との間で決済し、もし決済できない場合はその金額を被告人に支払うべき債務を負担したものと解せられるのであつて、右約束手形の振出はこれにより債務を負担すると同時に同額の債権を取得する関係にあり、これを山林の売買代金から差し引くのは相当でなく、右所論は採用できない。しかし繋山林に関する売買が、伐木を引渡すことによつてその所有権が移転する趣旨の出材契約であることはすでに判示のところ、国税庁長官昭和二六年基本通達一-二〇一は、所得税法(昭和二三年法律第二七号)九条七号に定める山林所得の収入金額の権利確定時期に関し「山林所得については、権利の確定時期は、立木又は伐木の譲渡に因り、当該立木又は伐木の所有権が移転する時による。但しその移転の時が明らかでないものについては、当該譲渡契約が効力を生じた時とする。」と解釈基準を示しているのであつて、これが本件売買にも適用されるべきことは疑義がなく、そうとすれば、被告人の秋田木材に関する昭和三二年度における山林所得は、同年度内に現実に引渡された伐木の価格をその収入金額として算出すべきであり、したがつて右売買を立木売買と解し同年度に締結された契約書の総代金額をもつて直ちに同年度における収入とした原判決の認定には、判決に影響を及ぼすこと明らかな事実の誤認があるといわなければならない。所論一の(二)は理由がある。

次に所論二について判断するに、原審証人那須辰男の証言および同人の検察官に対する供述調書によると、本件繋山林は同人が支配人をしていた杉本合名会社が大正元年に取得して杉の植林をしたが、昭和二二年暮ころ、当時地元御所村森林組合の組合長であつた高橋金五郎に三〇〇万円で売却したこと、そしてこれに被告人の原審および当審における供述を合せると、右三〇〇万円は被告人が支出し、これが高橋金五郎より右代金として杉本合名に支払われ、なおその後被告人と高橋金五郎との間に右山林の帰属に関し紛争もあつたが、結局中間省略の登記により、杉本合名から被告人に対する移転登記がなされたことが認められる。しかし右三〇〇万円は杉本合名から高橋金五郎に対する売買の代価であつて、被告人が本件繋山林を取得した価格と直接に結びつくものではないところ、被告人が同山林を高橋金五郎から取得した経緯およびその金額を示すものとして、弁護人提出の山林土地立木売買契約書(当庁昭和四七年押第八号の六二)があり、その内容は所論に副うものである。したがつて同契約書の信憑性の如何は本件山林収入から差引かれるべき取得費を確定するため重要な意味を持つところ、前掲那須辰男の証言および供述調書、原審証人熊谷正五郎の証言、高橋清次郎の検察官に対する供述調書によると、繋山林の昭和二二年ころの価格は三〇〇万円か三五〇万円程度であつたと供述されており、これを前提とすれば、被告人が昭和二一年一〇月一五日付契約書をもつて、高橋金五郎から、同人が杉本合名より将来買受けるべき同山林を六〇〇万円で買受ける約束をしたとする前掲山林土地立木売買契約書およびこれに副う被告人の原審ならびに当審の供述は疑いなしとしないが、右契約書の外形上からはその成立の真正につき疑問をさし挾むべき点は見当らないのであつて、他にその信憑性を否定すべき資料もないのにかかわらずこれを排斥し、杉本合名と高橋金五郎との間の売買価格を直ちに被告人の本件山林取得価格とするのは合理性に欠けるものというべく、結局原判決はこれに影響を及ぼすこと明らかな事実を誤認した疑いがある。本論旨も理由がある。

次に所論三について判断するに、石鳥谷化学工業株式会社取締役会議事録(当庁昭和四七年押第八号の六一)、原審証人尾形勝治の証言、原審および当審における被告人質問の結果によると、被告人は昭和二六年ころから製鉄業等を営む石鳥谷化学工業株式会社の代表取締役に就任し、その株式の約七五パーセントを保有(昭和三二年当時)して経営に当つてきたが、同会社の資産内容が苦しく、昭和三二年一二月までに被告人が同会社に投入した資金は、同会社において被告人からの借入金として取扱つていた二、一二八万円と仮受金として取扱つていた八三六万六、五四六円の合計二、九六四万六、五四六円となつていたところ、同会社において当時建設中の鎔鉱炉の建設資金を岩手殖産銀行から借入すべく交渉をした際、同銀行より被告人に対し、同会社に対する前記貸付金名義のものも含む社長個人の仮渡金全部を免除しない限り融資は困難であると示唆されたことから、昭和三二年一二月一八日同会社において取締役会を開き、その席上で被告人が同会社に対する前記の各債権を放棄し被告人個人の欠損金として処理する旨の意思表示がなされたことが認められる同会社の仮受金補助簿(前同号の五八)および総勘定元帳(同号の五九)には、被告人の右各債権が同会社の昭和三三年の資本金に組入れとして借入金および仮受金の科目から抹消されていることが認められ、この記帳からすると前掲取締役会議事録と矛盾する如くであるが、同会社において右取締役会の以後に増資の手続を履み新株を発行したと認めるべき証拠はないのであつて、そうとすれば右取締役会において消減した被告人に対する債務を帳簿上抹消せしめるための単なる記帳技術として資本金組入れという方式をとつたものと解せられないではなく、右各帳簿の記載をもつて前認定を否定することはできない。

しかしながら、被告人において右のように債権の放棄をしたとしても、これが常にそのまま同年度の損金となるものではなく、法律により必要経費として認容される場合にのみこれを総収入金額から控除できることは租税負担の公平の原則から明らかなところ、所得税法(昭和三二年法律第一六〇号により改正される以前の昭和二二年法律第二七号)一〇条二項は総収入から控除すべき各所得に関する必要経費を定めているが、これらはいずれも当該総収入金額を得るために必要な経費であつて、本件の如き自己が経営に当る会社に対する債権放棄あるいは債務免除は右の必要経費には当らないし、また仮りにこれを事業所得のための必要経費と解する余地があるとしても、このような債権を貸倒れ金として損金に計上し得るのは債務者に破産若しくは和議の手続が開始するとか、債務者の債務超過の状態が相当期間継続して事業が閉鎖されあるいは衰微した事業を再興する見通しがないなど、債権回収の見込がない場合に限られるものと解すべき(国税庁長官昭和二六年基本通達一-二六九、一-二七〇)ところ、被告人が石鳥谷化学工業に対し債務免除の意思表示をした昭和三二年一二月一八日当時、同会社が右の如き状況になかつたことは前認定からも明らかであつて、これを同年度における被告人の損金としなかつた原判決の認定は相当で、本論旨は理由がない。

控訴趣意第二点について。

所論一、二は要するに前示繋山林の売却に関する山林所得の認定において、所論第一の一(一)の手形金額を同収入から控除せず、また同一の(二)のとおり右売買を立木売買で契約締結と同時に立木の所有権が買主に移転したと認定した原判決には、収入金額の算定や権利の確定時期に関する所得税法や民事法の解釈適用を誤つた違法がある、というにあるが、右は結局原判決の事実認定に対する誤認の主張に帰するところ、これに対する当裁判所の判断は所論第一の一(一)、(二)に判示のとおりである。

また所論三は、原判決は罪となるべき事実に対する法令の適用として、所得税法六九条一項とのみ摘示しているが、同条だけでは判示処分の根拠として不充分で、原判決には法令適用の誤りがある、というにあるが、有罪判決の理由において法令の適用を示すとは認定した罪となるべき事実に対して適用すべき法条を示し、よつて主文の判断に達する経過を明らかにするものであるところ、原判決は被告人が不正な行為により所得税を逋脱した旨認定のうえ「被告人の判示所為は昭和四〇年法律第三三号付則第三五条により、同二九年法律第五二号によつて改正された所得税法第六九条第一項に該当する」として認定事実に対する法令の適用を示し、同法条が所得税逋脱犯の構成要件およびこれに対する刑を規定して、これが罪となるべき事実に対する適用すべき法条として欠けるところのないことは同条の法文自体から明らかである。原判決に所論の法令解釈適用の誤りはなく、本論旨は理由がない。

以上認定のとおり、原判決には所論第一の一(二)および二の点において、これに影響を及ぼすこと明らかな事実の誤認があり、その余の論旨(所論第三の犯意ならびに量刑不当に関する主張)につき判断するまでもなく、刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により破棄を免れないところ、被告人の所得税逋脱の有無ならびに逋脱額の確定には、同年度内において所有権の移転した伐木の数量とその価格や山林取得費などにつきなお審理を尽くさせる必要があると認められるので、同法四〇〇条本文に則り本件を原裁判所である盛岡地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。

検察官 宮沢源造 出席

(裁判長裁判官 山田瑞夫 裁判官 野口喜蔵 裁判官 鈴木健嗣朗)

昭和四七年(う)第三一号事件

控訴趣意書

被告人 岡部岩雄

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、左の通り控訴の趣意を上申する。

昭和四七年二月二七日

弁護人

弁護士 榊原孝

仙台高等裁判所第一刑事部御中

控訴の趣意

原判決は判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認ならびに法令の解釈適用上の誤があり、且量刑重きに失するから破棄を免れない。

理由

原判決は、罪となるべき事実の認定につき、単に証拠の標目を羅列するのみであつて、認定にかかる「昭和三二年度の実際の所得金額四五、三八五、〇〇〇円は」如何なる証拠に基いたものか、皆目不明なるところ、判示事実の認定は、税務官吏並に検察官による認定と全く同一であるから、被告人の当該年度における収支の計算ならびに所得金額算出の計算根基については、すべて税務官並に検察官の主張をそのまま採用されたものとして、以下その失当なる理由を述べる。

第一、事実誤認について

一、原判決は税務官並に検察官の主張を踏襲し、昭和三二年度内における繋山林売買による被告人の収入金額を金六千五万二千円(別訴盛岡地方裁判所昭和三八年(行)第五号事件では、金六千五万二千九百十円)と認定しているが、右は甚た失当である。

(一)、内金三千五百万円については同年度の収入とみらるべきではない。

理由

被告人は昭和三二年一月三一日秋田木材株式会社(以下単に秋木という)に右山林を売渡すに際し、(第一面売買)受領した代金三千万円(内現金千五百万円、約束手形千五百万円)については秋木に対し、額面合計金千五百万円の約束手形五枚を振出し、(証第三七号、契約書覚書)更に同年四月五日契約(第二回売買)に際し受領した金千万円(現金)については、額面合計金二千万円の約束手形八枚を振出し、合計金三千五百万円の約束手形金債務を負担した。

右約束手形は、秋木に対する融資手形たると、見返り乃至保証手形たるとを問わず、被告人としては、その所持人に対しては支払の義務を免れ得ないのであるから、右手形が被告人に無償で返還されるまでは、右額面に対応する受領金三千五百万円は、借受金乃至仮受金として処理しなければならず、到底確定した収入と云うことはできない。右約束手形は昭和三二年度内に返還されないばかりか、ついに返還されないまま今日に至つている。

(この点につき原審第五三回公判証人木村政義が、右手形金を被告人に支払つた旨の証言は、全く措信するに足るものではない)

果してそうだとすれば、当該年度における山林所得の計算根基となつた繋山林売却による収入金額は右金三千五百万円を差引いた金二千五百五十二万九百十円とさるべきである。

(二)、仮に前項に理由がないとしても、認定にかかる当該年度山林売買収入金のうち、千七百四十万円については、同年度の収入とみらるべきではない。

理由

(1) 税法上山林所得は、対象物件の所有権が移転する時を以て権利確定の時期(収入とみるべき時期)とされているので(所得税取扱通達昭和二六年二〇一号)本件繋山林売買において、当該年度の収入とみらるべきは、目的物件の所有権が買主秋木に移転された限度に限られ、然らざるものについては除外さるべきものなるところ、繋山林売買契約総石数三万千石のうち(証第三七号、証第三八号、証第三九号、証第四二号)昭和三二年一二月三日までに引渡され所有権が買主に移転した数量は合計二一、〇二八石六斗であり、それ以後同年一二月末日までに引渡された数量は一、二五〇石であるから(証第 号原木受払簿)その合計は二二、二七八石六斗で残余約八、七〇〇石余りについては、未だ引渡がなされずその所有権は秋木に移転されていない。これを約旨に基く石当り単価二千円の割で計算すると一、七四〇万円となり、右金額については同年度の収入とみらるべきではない。

果してそうだとすれば、被告人の当該年度内における繋山林売却による収入は金四二、六五二、九一〇円である。

(2) 原審において、被告人及び弁護人は上記の点について極力主張し立証したにもかかわらず、原判決が判示認定をするに至つた以所は蓋し原判決は、被告人と秋木との間においてなされた本件山林売買契約の性質は、双方立合検知の上目的物件の引渡(所有権の移転)がなされる所請出材契約なるにもかかわらず、税務官並に検察官の主張を容認して右契約は契約成立と同時に山元立木のまま契約石数が引渡される(所有権移転)所請立木契約であると誤認したからに由るものと請わなければならない。

以下本件山林売買は「出材契約」であつて「立木契約」ではないことについて当弁護人の所見を述べる。

(イ) 所請立木契約においては、通常売主及び買主は、特定地域の目的立木について、予め推算された在石数、樹種材質立地条件等によつて、価額の商量が行なわれ、合意に達すれば取引が成立する。仮に単価の見方に意見の一致をみても、在石数の見方に相異があれば、契約成立の余地なく、契約を成立させるためには、毎木調査などによつて双方納得される在石数が求められなければならないであろう。

しかし、この場合単価や在石数は契約の前提乃至価額取決めの基準とはなつても、契約の要素ではなく、契約書にはその表示なく、「特定地域につき〇〇立木全部」など、記載されるのが普通である。

すでにして、価額について合意が成立し、契約の締結をみれば、所有権は買主に移転するのであるから、売主はもはやその後の伐採、搬出や、出材石数の増減などには何等関するところではなく、出材石数による価額の清算などはあり得ない、したがつて、厳密な検知基準を定めたりして、双方立合検知をする必要は全くなく、通常そのような手数は行われていない。

(ロ) 本売買は、向井喬の斡旋により、被告人と秋木盛岡出張所長木村政義との間に商談がすすめられ、価額につき、山元立木のままで石当り二千円とすることに話がきまつた。これは伐採、搬出等経費を買主の負担としての価額の商量であるから、未だ契約の性質を確定するものでないこと勿論である。

そこで買主秋木では、右木村政義、資材課長水木雄作等をして数日かかつて現地調査をさせ、その見積石数によつて所請「立木売買」をしようと希望したのであるが、売主被告人との間で地域別(被告人は本件山林台帳面積六九歩、実測面積約百町歩を任意に区分し、地域別に二二林班としていた)に見た立木在石数の見方に到底折合のつかない差異があつて(原審第二八回法延証人向井喬によれば三割ほどの差異があつた。証第三八号、証第三九号、証第四二号各契約書の文言によれば「甲乙両者において該林班の石数の認定に差異があることを考えられるので」として、右消息を物語つている。)

買主秋木の希望による立木売買は成立せず、結局双方立合検知の上で石数を確定して取引する所請出材契約による商談が成立したものである。

(原審第二八回法延証人向井喬証言、証人木村政義証言、被告人本人尋問調書、証第 号原木受払簿)

(ハ) 昭和三二年一月三一日付第一回契約書(証第三七号)の記載によれば、「来る三二年二月一五日迄に甲乙両者にて厳密に毎木調査をなし、引渡を行うものとする」とされているけれども、実際には右毎木調査は行われておらず、(したがつて、引渡はなされない)証第三八号、証第三九号、証第四二号契約書においては「毎木調査を省略し」として立木契約の成立を断念し、地域別に在右数の見方に相違あるまま一応の石数(仮定乃至推定)を定めて、概算価額をきめ、結局は農林省規格規定による検定法によつて双方立合検知によつて石数を確定の上引渡す出材契約とする趣旨を表わしている。

従つて、各契約書表示の価額は、仮定又は推定に基く一応の概算額にすぎず、これによつて取引が確定したものではなく出材石数によつて価額が確定し取引が成立するわけである。証第三八号以下には、価額につき「但この石数は出石を云う」と特記して這問の趣旨を明示している。価額につき「立木のまま」とあるのは、伐採、搬出等諸経費を買主持として単価を取決めた趣旨に外ならず、これによつて契約の性質が左右される筋合ではないこと前記の通りである。

(ニ) 前記本件売買契約書の記載には暖味なケ所がないわけではない。表題はいずれも「立木売買契約書」とされ、「林班名が特定され」「引割期日」が記されていることなどがそれである。税務官、検察官はこれ等表示に基いて本売買は契約と同時に所有権が買主に移転する「立木契約」であると認定し、原判決もこれを踏襲するとみられるものであるが甚だ失当である。

抑々本件取引において、買主秋木は、契約書毎に売主被告人に対して一応の代金を概算渡しているけれども、第一回契約(証第三七号)第二回契約(証第三八号)に際しては被告人から見返りとして額面合計金三、五〇〇万円の約束手形の振出しをうけ、これを以て金融機関から割引融資を受けており、(証人片谷国雄証言)本契約書は右融資のため金融機関に呈示するために作成されたことが顕著である。(前記向井喬証言、被告人本人尋問調書)、そうだとすれば、そのために便宜、事実に反し契約と同時に物件所有権が秋木に移転しているかの如き表現を用いたとしてもあり得ないことではない。

右記載にかかわらず、各契約書の記載内容を子細に検討すると上記(ロ)記述の通りであつて、実際の取引は日的物件の厳密な双方立合検知の上引渡され、その都度所有権が移転する方法によつており、昭和四二年一二月三日、二八石六斗(五二、九一〇円)についても清算されていること、税務官の当該年度収入金額認定自体によつて明らかである。所詮、原判決の認定は文言の枝葉に拘泥して、本件契約の本質を見失つたものと請わなければならない。

(ホ) 其の他、本件契約が出材契約を裏付ける事実は左の通りである。

a、昭和三二年四月五日付第二回契約書(証第四二号)協定書には特に十三尺以上の長材伐採の場合の検尺方法が約定されていること。

b、被告人は立木伐採方法についてしばしば秋木の人夫に注意を与えていること。

c、税務官、検察官においても、同年度における被告人の山林所得として計上している通り、被告人は秋木に売渡した同地域中の立木につき、昭和三二年に杉電柱材一、八六二石三斗七升を日本電柱株式会社に売却しており(出材契約)(別件乙第四四号証の一、二、三)佐々木恵次郎外一〇名に杉丸太長木三九九石を売却し、更に秋木において盛に伐採中である昭和三三年七、八月頃藤原製材所に、秋木が伐り残した杉材七〇〇石を(立木売買であれば、このような伐り残し立木がある筈がない)同年九月には、木村木材(株)に杉一、〇〇〇石を夫々出材契約で売渡していること。

以上これを要するに本件山林売買は出材契約であるから、被告人が一応受領した金員のうち、未だ立合検知の上引渡がなされない目的物件石数に相応する金額については、清算の結果都合によつては返還をもしなければならない仮受金の性質を有し、確定した収入とみることはできない。所得の計算根基としてこれを看過した原認定は甚だ失当である。

二、国税査察官並びに検察官は、繋山林取得価額を金三〇〇万円と認定され、原判決もこれを踏襲するが失当である。

被告人の取得価額は六〇〇万円であるから、当該年度山林譲渡所得の計算根基に重要な差異を生ずる。

以下説明する。

被告人は早くから右山林を買受けたい希望があつたが、元所有者杉本合名会社では、地元御所村森林組合長高橋金五郎には売渡すけれども、被告人には売渡さない意思を明示していた。

被告人は当時、同森林組合長高橋金五郎に対し、同人において杉本合名会社から買受けて被告人に売渡してもらいたい旨申出で、同組合長はこれを承知して、昭和二一年一〇月一五日、価額金六〇〇万円で、同組合から被告人に売渡すことの契約を締結し、契約成立と同時に被告人は金三〇〇万円を同組合長に支払つた。(他人の物の売買)

翌昭和二二年一二月頃、御所村森林組合長高橋は、杉本合名会社から右山林を金三〇〇万円で買受けることとなり、その際被告人は同組合長と同道して上京し、杉本合名会社に対し、組合長高橋金五郎を通じて残代金三〇〇万円を支払つた。

当時同組合長は、右山林のうち二分の一を被告人から買戻し度い希望があり、被告人は前記同組合長との契約に際し、一ケ年以内の期限を定めて金三〇〇万円を以て半分を売戻すことを約したが、当時財政難であつた組合は、買戻代金の調達ができず、売戻は果さなかつた。

(昭和二一年一〇月一五日付、山林土地立木売買契約書、証第 号)

第二七回法延証人那須辰男証言中売買に際し、被告人が高橋金五郎と同道して宿に居たこと。

第二回法延証人熊谷正五郎証言中、被告人が六〇〇万円を買つたということを聞いていたこと。

被告人本人尋問調書。

国税査察官は、右取得価額認定につき、右山林は被告人が杉本合名会社から直接金三〇〇万円で買受けたものと誤認しているが失当である。検察官も原判決も右誤認を踏襲しているとみられる。

凡そ以上の次第で原判決は、昭和三二年度の被告人の判示課税所得金額の認定につき、その計算根基となつた繋山林売却収入において金三、五〇〇万円乃至又は一、七四〇万円、右取得金額において金三〇〇万円について事実誤認をなし、因つて課税さるべき所得税額につき判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認をしたものと請わなければならない。

三、被告人は昭和三二年一二月一八日、当時被告人が株式総数の約九〇%以上を保有していた石鳥谷化学工業(株)に対する債権

(1)、貸付金 二一、二八〇、〇〇〇円(同会社では借受金として処理)

(2)、立替金 九、三六〇、〇〇〇円(同会社では仮受金として処理)

計 金三〇、六四六、五四六円

を、取締役会において被告人の欠損金(貸倒金)として処理することに同意を与え、右債権は消滅した。同会社は実質上、被告人の事業の重要な一環であるから、右は被告人の当年度の損金乃至必要経費として総収入金額から控除さるべきであるが、原判決がこれを看過しているのは本件課税所得金額算定上、失当である。

証第 号石鳥谷化学工業株式会社取締役会議事録

原審第五三回法延証人尾形勝治証言

被告人の尋問調書

本論点並に検察官の論告に対する所見については原審当弁護人弁論要旨第三において述べているからこれを援用する。

第二、法令の解釈適用について。

一、原判決は、所得税法上、上記第一、(一)に述べた約束手形金三、五〇〇万円については、当然当該年度収入の計算上除外さるべきであるにかかわらず、これを看過し

二、上記第一、(二)に述べた金一、七四〇万円については、繋山林売買契約の性質に関する民事法上の解釈、乃至税法上山林所得の権利確定の時期に関する法令の解釈適用を誤つたものである。

三、原判決は被告人の量刑につき、所得税法第六九条第一項に該当するものとして判示処分をされるけれども、挙示の法令のみでは判示処分の根拠とはならない。

第三、犯意ならびに量刑について

原審当弁護人弁論要旨、第四、其の他第五犯意並に情状について、において述べたところと同一であるから、これを採用する。

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